２０１４年度大学院法政理論専攻・ヨーロッパ法文献読解１の記録
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講義要項
講義題目 DCFRの研究（信託）
配 当 期 ５月末から７回・木曜・１校時、第7演習室
単 位 1
講義の概要と目的
ヨーロッパ私法の共通諸原則とモデル準則を提示する共通参照枠草案DCFRが、2009年10月末に公表された。これは民法の規律の世界的な平準化や統一に大きな影響を与える重要な試みである。この比較法ノートには、ヨーロッパ連合加盟各国の法令・判例・学説の状況が簡略に紹介されている。
この講義は、大学院法曹養成専攻（法科大学院）から研究者を目指して法政理論専攻に進学した者（特定研究学生）に、英語の専門文献の基礎的な読解力と、日本語の作文力、この分野の基礎知識を得させるとともに、上記比較法ノートにある英語以外の法資料を適宜調べて読むことにより、比較法の基本的な手法をも学んでいただくことを目的としている。
講義計画と内容
第1回目に講義の概要の詳細を補足して説明し、参加者の研究対象、問題意識、希望などを聞いて、DCFRのどの部分を講読するかを決める。
第2回目～第7回目は、実際に選んだ部分を順次講読し、日本法において相応する問題がどのように解決されているか、解決されるべきかについても参加者全員で討論する。参加者には毎回、数ページの日本語試訳を提出すると共に、そこに、必要に応じて、英語圏以外の法資料（とりわけ法令）についても調査して報告をしていただく。
履修要件
今年度、法曹養成専攻から法政理論専攻博士後期課程に進学した者を対象としている。
成績評価の方法と基準
毎回の報告と議論の積み重ねを通年で評価する。読解の正確さ、問題意識、議論能力などの総合評価である。期末試験は実施せず平常点評価をする。
- 教 材
- Study Group on a European Civil Code and the Research Group on EC Private Law (Acquis Group), edited by Christian von Bar and Eric Clive, Principles, Definitions and Model Rules of European Private Law - Draft Common Frame of Reference (DCFR) Full Edition, sellier, 2009, 6 volumes.
参考書等
- 大村敦志『民法研究ハンドブック』（有斐閣、2000年）ISBN:4-641-13234-8（非常にレベルの高い研究の手ほどき書である。）
- 田中英夫編 『英米法辞典』 (東京大学出版会、1991年) ISBN:978-4130311397
- 小山貞夫編 『英米法律語辞典』 (研究社、2011年) ISBN:978-4767491073
- ベルント・ゲッツェ 『独和法律用語辞典［第2版］』 (成文堂、2010年) ISBN:978-4792392079
- ベルント・ゲッツェ 『和独法律用語辞典［第2版］』 (成文堂、2012年) ISBN:978-4792392246
- 山田晟 『ドイツ法律用語辞典［改訂増補版］』 (大学書林、1993年) ISBN:978-4475001267 奥付には第4版2001年とあるが、通常の本の第4刷と同義であろう。
- 中村紘一＝新倉修＝今関源成監訳 『フランス法律用語辞典［第3版］』 (三省堂、2012年) ISBN:978-4385157542
- 山口俊夫編 『フランス法辞典』 (東京大学出版会、2002年) ISBN:978-4130311724
- 柴田光蔵 『法律ラテン語辞典』 (日本評論社、1985年) ISBN:978-4535575547
- 柴田光蔵＝林信夫＝佐々木健編 『ラテン語法格言辞典』 (慈学社出版／大学図書、2010年) ISBN:978-4903425603
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LogoVista社から、『英米法辞典』と『英米法律語辞典』が電子データで販売されており、とりわけノートパソコンで持ち歩けるので使いやすい。さらに同社は、総務省の電子政府の窓口に掲載されている日本の法令データベースをオフラインで使用できるソフトを無償提供しており、有益である。
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講義の進行記録
No. 月 日 講義内容等の記録 1 5月29日
受講生の確定とガイダンス・講義進行の打合せ
受講生は１名のみに確定しましたので、事前の協議のとおり、DCFRの第Ⅹ編信託の個所を読むことになりました。日本法における信託法の位置づけ、DCFRの意義と位置づけ等について、概説を行い、Ⅹ.-1:101条のコメントＡを講読しました。
次回からは、小見出しのある段落を単位として、受講生が概要を取りまとめて報告し、難読箇所を拾って読み、日本法における信託について関連する問題を検討する形で講義を進めることとしました。
2 6月 5日
Ⅹ.-1:101条を読みました。
3 6月12日
Ⅹ.-1:101条の続き、102条、201条のコメントＢの途中まで読みました。
4 6月19日
Ⅹ.-1:201条の続きから、コメントＢの終わりまで読みましたが次の2個所で難航しました。
5680頁のthat solution does not present itself の件が難解です。信託上の受託者の債務が契約上の債務と似ているが異なるという解決が明確ではないことを示しているようですが、統合された信託法が、生前信託にも遺言信託にも適用されるということが、なぜ根拠として持ち出されるのか、続く法定債権法領域での信託債務はこの主張にどう絡むのかわかりにくいです。この段落の最後にあるように信託債務が対第三者効を生じる点で、その他の債務とは異なるというようです。
5680頁の設例１も難解で、火器所持制限の撤廃を目的とする信託が、公共の利益の促進という目的が一面で法律問題として公共の利益に関するものと評価されうるとしながら、結果的には否定される論理がわかりかねます。
どうもDCFRの説明には論理として納得できない個所が少なくありません。
5 6月26日
Ｘ.-1:201条のコメントＣの法人と信託の個所から続きを読み同条のコメントを終わりました。Ｘ.-2:203条に入り、5687頁の第一段落まで読み進みました。
6 7月3日
Ｘ.-1:203条のコメントＢの終わり（5690頁末尾）まで読み進めました。
7 7月10日
Ｘ.-1:203条のコメントＣからＸ.-1:206条 受益権及び受益資格まで読了しました。比較法ノートが欠けていたり、205条・206条のコメントがないなど、信託の第Ⅹ編は、まだまだ不完全です。
この講義は終了しました。
