民法第一部（総則・親族法）の講義のpdf版ののレジュメをこのページに掲載します。全学共通科目の「民法の基礎」は、同一講義で同一レジュメですが、クラシスに掲載します。ＰＤＦファイルは、Adobe Reader で閲覧・印刷して下さい。 そのためには、Adobe Reader を使用しなければなりませんが、このプログラムは、こちらで無償配布されています。

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　※マックに敵対心を抱いているわけではありませんが、レジュメの記載の便宜上、ローマ数字や丸付数字というウィンドウズに固有の文字を使用している部分があり、文字化けしますが、ご勘弁下さい。ＰＤＦ版は文字化けしない可能性があります（従来は問題が生じていませんが、お気づきの点があれば、お教え下さい→メール）。

• 講義要項と講義予定・一般的な参考文献

  　講義要項（法学部用）
  
  　講義予定表　第１回目のレジュメ及び以下の進行表を参照
  
  　参考資料：コア・カリキュラムの総則と親族法の部分の抜粋
  
  　※コア・カリキュラムとは法科大学院の教育における最低限の共通到達目標をいうが、法科大学院で既修者として学ぶのに必要な基礎知識と類似するものと考え、参考までに掲載する。
  　　詳しくは、「法科大学院コア・カリキュラムの調査研究」というwebサイトを参照。
  

• 講義予定とレジュメ
  

  
  

  回数	月日	テーマ	レジュメ	備考
  01	04/08	履修案内・民法入門(1) ： 民法とは何か	○	３−３は積み残しとなりました。次回あわせてお話しします。
  02	04/12	民法入門(2)：民法総則の位置	○	積み残し分を再掲載しています。積み残さないようにしなければいけませんね。
  03	04/15	能力(1)：権利能力・意思能力・行為能力	○	今回も積み残し分を再掲載しています。今回は積み残しはでませんでした。
  04	04/19	能力(2)：行為能力の制限と補充（親権・扶養を含む）	○	今回は最後の部分を積み残しました。
  05	04/22	能力(3)ほか：行為能力制限違反の効力・失踪宣告など	○	積み残し分を再掲載しています。
  06	04/26	法律行為と意思表示	○	今回は積み残し分（任期後見契約法の概略）は掲載しません。
  07	05/02	不完全な意思表示(1)：法律行為と意思表示（続）	○	心裡留保以下は扱えなかったので、以下の回の講義表題を再構成します。
  08	05/08	不完全な意思表示(2)：心裡留保・虚偽表示とその類推適用	○	表題を再構成し、設例の番号を振り直したり、一部の記述を修正しました。2個所の表記ミスを赤字で修正しました。
  09	05/10	不完全な意思表示(3)：錯誤	○	94条2項類推適用論の意思外形非対応型について再掲しました。
  10	05/13	不完全な意思表示(4)：詐欺・強迫	○	錯誤の学説対立の続きを再掲しました。12日午前3時に修正版をアップロードしました。
  11	05/17	法律行為の自由と制約(1)：強行法規違反・公序良俗違反	○	取消しと第三者の問題については要約を再掲載しました。
  12	05/20	（続）		強行法規違反の途中から持ち越しになり、今回は新たなレジュメは配付しません。以下1回ずつずれてバッファの回を使います。
  13	05/24	法律行為の自由と制約(2)：消費者契約法・約款など	○	近時の公序良俗論と公序良俗違反の効力は持ち越しになりました。今回は字数が多く表もついていて5頁になっていますが、書いたことで説明を省略する部分が少なくありません。
  14	05/27	無効と取消／条件と期限	○	今回は積み残しはなしです。
  15	05/31	代理(1)：代理総説・有権代理	○	期限を積み残しましたので再掲載します。
  16	06/03	代理(2)：無権代理	○	許されない代理以後を再掲載します。無権代理と相続はレジュメには挙げましたが、時間的に次回持ち越しになるだろうと思います。
  17	06/07	代理(3)：表見代理	○	無権代理と相続はやはり持ち越しましたので再掲載します。
  18	06/10	代理(4)：代理をめぐる諸問題	○	権限外の行為の表見代理の途中から再掲載します。今回で代理を終わるのは無理そうで法人を圧縮するつもりです。
  19	06/14	法人(1)：法人総説・法人の内部関係	○	法定代理と表見代理以下を再掲載。法人はあっさりとお話しします。一部赤字で修正（6/21）。
  20	06/17	法人(2)：法人の外部関係	○	前回比較的順調にペースを取り戻せました。法人の消滅を再掲載します。レジュメ掲載が遅くなってすみません。赤字修正（6/21）。
  21	06/21	法人(3)：権利能力のない社団	○	法人の不法行為責任の残りを微修正して再掲載します。タイトルを「権利能力なき社団」から「権利能力のない社団」と現代語風に直しました。講義後3個所の誤字訂正を行いました（赤字部分）。
  22	06/24	時効(1)：取得時効・消滅時効	○	再掲載なしでスタートできて嬉しいです。
  23	06/28	時効(2)：時効に共通の規律	○	大幅再掲載で5頁になっています。4頁目以降は進まない可能性が高いです。
  24	07/01	時効(3)：時効に共通の規律（続）	○	やはり大幅持ち越し再掲載。4頁ですが今回で時効が終わるかどうか？と危惧していたら奇跡的に完了！！
  25	07/05	親族法(1)：総説	○	今回から親族法に入ります。
  26	07/08	親族法(2)：婚姻	○	総説の一部を再掲載しました。婚約については一言しか触れません。内縁についても要点のみを説明します。
  27	07/12	親族法(3)：離婚	○	婚姻の効果以降を再掲載し、内縁は第29回に譲ります。レジュメを修正した部分を赤字で示しました。
  28	07/19	親族法(4)：離婚（続）・親子（実親子関係）	○	離婚の後半が積み残しになり、親子は実親子のみを掲載します。それも全部お話しするのは難しいと思います。
  29	07/22	親族法(5)：親子（続：養子関係と親権の概略）	○	実親子の残りと養子をさらっと片付けて内縁にも触れる予定です。日曜夜まで出張だったため掲載が遅くなってすみません。 講義後の質問に対応して赤字で修正・補足を加えています。
  30	07/26	私法の基本原則	○	家族法の補遺は含まないことにして、私法の基本原則のみに集中します。

  補足説明
  

  1. 第１回講義
     
     • 民事訴訟法は公法に分類しているものもあるという指摘がありました。裁判のやりかたを裁判所に命じている部分は、たしかに、手続上の執務命令であり、公法とみても良いです。どちらかというとそちらが通説的かもしれません。他方、民事訴訟法は、まさしく私人間の法律関係の確定や実現を問題にしている手続法なので私法に分類することもできます。公法・私法の単純な二分論が生産的でないというのは、民事訴訟法の位置づけひとつをとっても明らかでしょう。
       
     • 答案の書き方について質問がありました。古いものですが私の作った説明があり、基本的な考え方は変わりません。こちらを参照して下さい。
     
     
  2. 第2回・第3回講義（金曜は質問を受けられないのでまとめて書きます）の質問に対する補足を5点。
     
     • パンデクテン体系の功罪の「罪」は何かという質問がありました。法律行為概念など、抽象化されすぎてかえってわかりにくいことや、抽象概念からの演繹によりおかしな結論が導かれることがあります。良い例かどうかわかりませんが、債権総論の規定が契約以外から発生する債権についても妥当するとして、不法行為に基づく損害賠償の範囲について416条を（類推）適用する判例には批判があります。また、例えば、買主がキズモノを買わされたという日常的にありふれた問題について、売買契約のところの規定を探しても570条くらいしか見つけられません。民法総則の95条（錯誤）や96条（詐欺）、債権総則の損害賠償（415条・416条）、契約総則の契約解除（540条以下）など、民法のあちこちに適用される規定が散らばっていて、民法全体を勉強して、その規定の体系が一通り頭に入るまでは、法律の解釈適用がかえって難しく、法律学の学習への最初の牆壁となってしまっていることも挙げて良いでしょう。
       
       
     • Case 3-1 の3)4)について、「損害賠償請求権はどうなるか。」という問いへの質問がありました。あまりにも当たり前に思えて説明を1つ飛ばしてしまっていたのですが、初心者に不親切だったと反省しています。損害賠償請求権も財産権の1つなので、亡くなったＡやＢの損害賠償請求権は、財産上のものも非財産的な慰謝料請求権も、他の財産と同じように相続されます。亡くなった時の先後やＣが死産か生誕後死亡かによって相続の結果が異なるという説明の相続の中に、損害賠償請求権も含まれることになります。
       
       
     • Case 3の全体に関して、仮にＣが死産であれば、Ｃが胎児であった時に受けた損害は誰も賠償請求できなくなるが良いのかという趣旨の質問がありました。良い質問です。たしかにＣ自身の損害賠償債権は、死産の場合には721条が適用されないため、誰にも帰属しません。しかし、母親Ｄは、胎児が死亡するという障害以上の大きな侵害を受けていますので、Ｄ自身の損害の内容が、Ｃが生きて生まれた後に死亡した場合以上に大きくなり、賠償請求（主として慰謝料請求）の額が増えることになります。けっして加害者Ｙの得にはなりません。
       
       
     • Case 3-1 でＣが死産ではない場合、Ｂの財産は兄弟であるＣも相続できるのではないかとの質問がありました。900条3号の誤読ですが初心者には無理もないことです。900条1号〜3号は、それぞれ順に適用されます。1号が適用されるときは2号・3号は適用されず、2号が適用されるときは3号は適用されません。つまり、兄弟姉妹が相続できるのは、亡くなった被相続人に、子供も親もいない場合に限られます。配偶者は常に相続人ですが本件ではＣには配偶者はいないという設定ですが、母親Ｄがいますので兄弟ＣがＢを相続する余地はありません。
       
       
     • 高度な質問で、停止条件説に立つ判例では、示談後に生まれた胎児の損害賠償請求が否定されることはありえないのか、というものがありました。胎児は出生前は権利能力がないという停止条件説では、原則としてその後に生まれた胎児は、胎児の間に行われた示談には拘束されません。しかし、胎児の損害についても十二分にカバーする内容の示談がされていて現に胎児がその利益を受けているのに、示談の当事者であった親権者が胎児を代理して重ねて損害賠償を行うのは禁反言に触れる信義則違反あるいは権利濫用であるとして一般原則により請求が否定される余地は残ります。さらに、一般原則によらなくても、現に胎児の損害はすでに示談による給付で現実に填補されていて現在はされに賠償されるべき損害が残っていないという理由で、重ねての損害賠償請求を棄却することも考えられます。
     
     
  3. 第4回・第5回講義
     • Case 5-1や5-3において、契約相手方は、制限能力者には現存利益だけの返還を請求することができるにすぎないのに、自分は受け取った物やその価額全部を返還しなければならなくなると大きな損をするのではないか。また、未成年者が、これに味をしめて同じ中古パソコンをいろいろな店で売っては取り消して、代金を多重に取って遊興費に充てるということができてしまうのではないか ── この趣旨の質問が複数寄せられました。前者はそのとおりです。契約相手方に不利益を与えても制限行為能力者を保護するべきであるというのが民法の発想であり、行為能力制度の核心部分です。その理由は後半の問題に対する答えであわせて説明します。後者のように未成年者が次々に取り消しできる契約をして儲けるという事態は起こりません。というのは、こういうことです。契約の相手方は、行為能力が制限されていること、たとえば契約相手が未成年であることは、年齢を尋ね、必要な場合には免許証や学生証、戸籍謄本などを提示させて確認することができます。未成年者であることがわかれば、法定代理人（通常は親）の同意を得ることを求め、拒否されたら取引をしないこともできます。実際、たとえば、中古ゲームソフトを中高生が売りに来た場合、中古ソフトショップは、ほとんど必ず親の同意書か署名捺印（これも同意を明らかにする趣旨）を求め、これがないと買い取りません（年齢を詐称するなどして能力があるといつわれば取消しはできません。21条）。こういうふうに、契約相手方は、契約相手方が制限能力者であるかどうかを確認でき、制限能力者であるとわかれば、契約を取り消されない確実なものとされるように、法定代理人等の同意を求めればよいわけです。そういう手順を慎重に踏まずに制限行為能力者とあえて契約をした者が、一定の不利益を負わされてもやむをえないというべきでしょう。
       
     
     
  4. 第7回講義の余談と補足
     
     • 「佐村河内守」って芸名？どこまでが名字？余談なので気になる人は、この名前で調べてみて下さい。その後、交響曲第１番　HIROSHIMAには、けっこう、はまっています。
       
     • 準法律行為について
       　1　意義　法律効果を発生させる行為のうちで何らかの意思的要素を伴うが、法律行為とは異なって効果意思は伴わない各種の行為をいう。例えば、弁済の催告は、弁済せよという意思を通知するものであるが、催告をする債権者がいくら弁済を欲していても催告だけで弁済という効果が認められるわけではなく、催告による法律効果は時効の中断〔民147〔1〕・153〕・履行遅滞〔民412<3>〕・解除権発生〔民541〕にとどまり、しかも、これらの効果は催告者が欲したかどうかにかかわりなく、催告をしたという事実に対して直接に法律の規定に基づいて与えられる。そこで、催告は準法律行為であると説かれる。準法律行為の概念は、民法の意思表示に関する通則（行為能力・錯誤・代理等に関する規定）が適用されないと考えられる各種の行為（下記　2　参照）を集めて、法律行為に対する意味で与えられた名称であり、意思表示の規定の適用範囲を明らかにする点に実益がある。しかし、準法律行為のうちでも意思表示の規定を類推適用されるのが妥当であると思われるものも少なくなく、結局、適用されるかどうかは個々の準法律行為ごとに判断しなければならないと考えられており、その限りで準法律行為という概念を立てることの意味はそれほど大きなものではない。
       　2　種類　準法律行為は、普通、一定の意識内容を表現するもの（表現行為）とそうでないもの（非表現行為）とに分類される。前者には意思の通知〔例：民20・153等〕・観念の通知〔例：民109・467・522等〕・感情の表示〔例：民旧（昭和22法222改正前の）814（姦通（かんつう）の宥恕（ゆうじょ））〕があり、後者には、先占〔民239<1>〕・遺失物拾得〔民240〕・事務管理〔民697〜702〕などがある。
       [株式会社有斐閣　法律学小辞典第４版補訂版]より、私法関係の部分を引用
     
     
  5. 第16回講義
     
     • 誤字を修正しました。
       
     • 本人死亡後に共同相続が生じたが、代理権が存続することを認める場合、相続人の一人は委任を解除できるかという質問がありました。たしかに委任契約の場合には、理由がなくても契約関係を終了させる解除ができます（651条1項）。しかし、法律関係が一部分だけ解除されるというのでは複雑な関係が生じてしまいますので、解除は共同相続人が全員で行わなければなりません（544条1項）。
       
     • 本人死亡後に広く代理権の存続を認めると危なくないかという質問もありました。良い質問です。たしかに、「死人に口無し」ですから、自称代理人が本人死亡後もその財産を意のままに処分してしまう危険があり、それは遺言について比較的厳格な方式要件を必要とする趣旨（960条。967条-984条）にも反します。それゆえ、本に死亡後に代理権が存続するためには、そのような本人の意思が明確であり、書面や公平な第三者による証言など客観的に信頼できる証拠によって委任内容が立証でき、かつ、それが合理的な内容であるなどの限定をする必要があるでしょう。
       
       
     • 「詐欺・強迫や制限能力違反による本来の取消しは、本人の追認後でも可能」という記述がわかりにくいとの指摘がありました。無権代理の善意の相手方の「取消権」は、追認がされていない間に行使する必要がありますが、代理人に欺かれたなどの要件は不要です。これに対して、相手方が制限行為能力者であったり、無権代理人に騙されたり脅されたりした場合には、本人が追認して代理行為の効果が本人に帰属することになっても、相手方は、なお5条や96条を根拠に取消権を行使することが可能です。
       
       
       
  6. 第20回講義
     
     • 何よりとんでもなく恥ずかしい年の修正漏れを直し、「熊司法書士会」（爆笑）⇒「群馬司法書士会」も修正しました。
       
     • 第19回講義の法人設立に関する法の関与類型の個所で、地方自治法260条の2に基づく地縁団体を当然設立としておりましたが、誤りでした。規定上、市町村長の認可が必要ですので、認可主義と解するのが正しいです。ずっと以前からの誤記が気付かずに残ってしまっていました。ご指摘をいただいた方に感謝し、レジュメのこの部分は赤の取消線を加えておきました。
       
       
     • 一般法人法の解散に関する規定の参照が一部不正確でしたので直しました。
       
       
     • 一般法人法78条や民法715条の適用において、取引的不法行為の類型では、被害者の善意・無重過失が、法文には書かれていない追加的要件となっています。その理由として挙げた「外形に対する信頼、表見代理規定との関連性」というあたりが、時間切れになったこともあってわかりにくいとの質問がありました。次回冒頭で、もう一度触れます。理事に代表権限がないとか、代表権限に制約があるとか、理事が利益相反や代表権濫用をしていることを知りながら取引する者はいません。いたらそれはむしろ理事と共謀して法人に損害を与えている加害者であり、被害者ではありません。むしろ、相手方は、理事に正当な代表権限があり、その範囲内で適法に代表行為をしていると信頼したからこそその法人との契約を締結しているのです。保護するべきは正当な代表権への信頼であり、不法行為責任においても、法律行為責任における表見保護法理と同様、相手方には最低限度善意が要求されるのです。他方、次回に論及しますが、いわばオール・オア・ナッシングの法律行為責任と異なって、過失相殺による損害の分担（一部責任）が可能な不法行為責任では、被害者には無過失まで必要とはされません。ここでは法律行為責任と不法行為責任の機能分担関係が見て取れます。
     
     
  7. 第24回講義
     
     • 奇跡的に時効を終わりました。若干の質問があったので補足しておきます。
       
     • Case 23-2 (b)はどうなるかというと、主たる債務者に援用を求め、主たる債務者が援用すれば主たる債務が消滅し、保証債務の付従性によって保証人は、自らは消滅時効を援用する必要もなく、支払い義務を免れます。(a)と同じです。これに対して、主たる債務者が援用権を放棄したり、（信義則違反や行方不明などで）援用できない場合は、保証人は自らの援用権を行使し、主たる債務が消滅し、やはり保証債務の付従性によって支払い義務を免れます。こちらは(c)と同じです。
       
     • Case 24-2（赤で修正していますが23-2と誤記になっていました）はどうなるかというと、判例P�U180によれば、瑕疵を発見してから1年の除斥期間内に、売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げれたと認定されれば、その時から損害賠償請求権や解除に基づく原状回復請求権が発生し、それは10年の消滅時効に服します。いわゆる二段階構成です。この場合には、Ｘは悠々とＹの責任を追及できます。これに対して、そのような意思を明確に告げていないと認定されれば、Ｘの権利はすでに失われており、責任追及ができません。Ｙの引き延ばしの態度は非常に不当なのですが、除斥期間だとの理解からは、権利濫用や信義則違反で調整するのが難しくなります。
     
     
     
  8. 第29回講義
     
     　急ごしらえのレジュメで体裁の不備や誤記、また誤りもありました。お詫びして訂正します。
     
     • 817条の3の夫婦共同縁組の項
       
       　タイトルが夫婦共同養親となっており、単独特別養子縁組という例外の場合にも夫婦の両方が養親と書いていました。タイトルを夫婦共同縁組と修正します。また、単独特別養子縁組という例外の場合には、養子縁組をした者が養親、しなかった実親は実親のままとなります。言いたかったのは、片親が実親の場合には、夫婦共同縁組をしなくても父母が揃う、ということでした。表現が誤っていました。
       　なお、（夫婦の）「他の一方の嫡出である子」に括弧書きがあり、わかりにくいですが、「特別養子縁組以外の縁組による養子」とは普通養子のことですから、普通養子を特別養子に改める形で場合には、特別養子と普通養子の効果の相違、親子関係安定の要請から、原則通り、夫婦共同縁組をしなければなりません。非嫡出子の場合にも、当然、夫婦共同縁組になります。
       
       
     • 817条の6の父母の同意の項
       
       　「単独特別養子縁組の場合にも連れ子の親の同意は不要（817条の9但書）」は、いろいろ間違いが多い凡ミスでした。
       　まず、例外則は同条ただし書きの場合に尽きます。配偶者の連れ子の親には、原則通り、同意が必要です。連れ子が普通養子の場合には、離婚したもう一方の養親のほか、実の父母の同意も必要です。ただ、連れ子が認知されていない婚外子である場合には、血縁上の父がいても未認知で法律上の父子関係がありませんので、その者の同意は必要ありません。元の文章はそのようなケースを表現したかったのだろうと思いますが、極めて不正確でした。
       　なお、ただし書きの例外に該当しない限り、父母の両方の同意が必要です。未成年者の婚姻の場合（737条2項）とは異なります。
       
       

試験問題とミニ解説

１　全学共通科　7月29日（月）10時30分〜11時50分　法経本館第10演習室で実施

　　　試験問題

　　　解説

２　経済学部　7月29日（月）10時30分〜11時50分　法経東館311教室で実施

　　　試験問題

　　　解説

３　法学部

　　　試験問題　試験問題に誤記があり申し訳ありませんでした。掲載したものは２点の修正を施しています。

　　　解説　　　　とりあえずの解説速報版です。後に修正や補足を加えるかもしれません。疑義があればメールでお問い合わせ下さい。

　　　　　　　　　　採点報告期限の9月半ば頃までには、採点した感想などの講評を掲載する予定です。